漠然とした勉強法に理論という土台を与える/市川伸一『勉強法の科学-心理学から学習を探る』

勉強法の科学?心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)

勉強法の科学?心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)

 

 f:id:school_of_dog:20151105224439j:plain定期考査前なんかに、生徒にドヤ顔で語れそうな勉強法の科学だぞ。

 

 莫大な量の暗記を要する大学入試や教員採用試験を通過してきた先生たちなら、本書に出てくるような勉強法は漠然と頭の中にあることだろう。だけど、この本はきっと、読者が知らない画期的な勉強法を伝授するというようなことを目的としているのではない。だから、「この本に書かれていることなんて、みんな知ってるよ。こんなの常識でしょ?」という批判は的外れになる。

 大事なのは、その漠然とした勉強法に心理学というバックボーンを与え、確信を持たせてくれるところだ。ボクも読んでいて、「なるほど! そういうことだったのか!」と唸るところがたくさんあった。

 

 本書で学んだことは、学習指導(もとい、ボクのドヤりタイム)にも役に立つ。

 例えば。

 「丸暗記って辛いです。しかも頑張って勉強しても忘れちゃうし。どうやって勉強すればいいんですか?」

 と、定期考査前に生徒たちが嘆いていたとする。

 そこで、

 

 112358132134

 

 と板書してみる。

 

 「さぁ、今からこの数字を覚えてみよう。30秒後に聞くよ」というと、「えー」「めんどくせぇ」「ムリだって」みたいな反応が返ってくるだろうな。そして30秒後、ブツブツとつぶやいてなんとか答えられる子が半分くらい? だけど、その場は「すごいね、よく覚えられたね!」なんて言いつつ5分後に不意を突いて再び聞けば、答えられる子は1人もいまい。

 

 そこでボクはこう言うのだ。

 確かに、この数字を真正面から暗記するのは大変だよね。だけど、実は10秒足らずですべて覚えるウラワザがあるんだぜ。

 そのウラワザとは、12コの数字そのものを覚えるのではなく、1コの法則を理解することだ!

 並んでいる2つの数字を足すと、その右隣りの数字になるという法則に注目しよう(いわゆる、フィボナッチ数列というやつ)。

 この法則を見つけ出せれば、この数字を再現するのはたやすいよね。勉強って、真正面から丸暗記するだけじゃないんだよ。色んな工夫のしようがあるんだ。

 この説明で、目からウロコが落ちる生徒はいっぱいいるんじゃないかな。先生も鼻高々! やったぜ!

 

 こーんなことを自信を持って話せるのは、著者である市川先生の膨大な実験に裏付けされた理論が味方になってくれているからだ。独りよがりではないからだ。

 

 本書で特に面白かったのは、第1章(どうすればよく覚えられるか)と第4章(やる気の出るとき、出ないとき)。

 第1章は、短期記憶を長期記憶として定着させるには基本的にリハーサル(繰り返すこと)が有効だけど、それだけが能じゃないと説く。最後には社会科での効果的な学習方法が示される。ここで示させるような知識を関連付けるような学習はとても大切だとボクも思った。

 ただし、先ほどのフィボナッチ数列の例を出したところで「それは分かるけど、具体的に先生の教科では何をどう工夫すればイイんですか?」と聞かれるのがオチなので、そこから自分で考えないといけない。

 第4章は、教員採用試験のために昔(それこそリハーサルによるゴリ押しで)覚えた教育心理学って、実は結構大切なんだなってことに気づかせてくれるものだった。いや、ある程度教師として仕事したから見えてきたのかなぁ。大学生の時は、教育心理学なんて退屈でしかなかったんだけど……。

 

 既存の答えの丸暗記に終始しない探究的な学習が目指される時代だ。とはいっても、どうしても「覚える」ことが必要な部分は存在し続ける。どうせやらないといけないのなら、意味がある方法で、効率的にやらせてあげたいものだ、と思った。

 絶対の解決策、「こう言えば勉強できない子も心理学のチカラで救えるよ!」なんてものが示されるわけではない。そこから先は、自分で考えていくしかない。だけど、勉強ギライの子どもに向き合う言葉がちょっとだけ増える。そんな本だった。