「技術は、兵器にも医学にも使える。使うのは人間ですから」/NHKスペシャル 戦後70年 ニッポンの肖像 豊かさを求めて 「第1回 “高度成長” 何が奇跡だったのか」

概要(引用)

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain2015年放送。49分。

 第二次世界大戦の敗戦からわずか20年余りで世界2位の経済大国に上り詰めた日本。

 世界史上、類を見ないスピードで復興し高度成長を成し遂げたその復活劇は日本の奇跡と称賛された。

 あの奇跡はなぜ起きたのか。

 日本人の実力だったのか、それとも時代の産物という幸運に過ぎなかったのか。

 高度成長論を打ち立てた大蔵官僚の下村治を始め、膨大な記録や資料をひもとくことで高度成長の真の姿を明らかにし今に生かせる教訓を探る。

 

評価:3

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f:id:school_of_dog:20151105224448j:plain太平洋戦争で徹底的に負け、焼け野原となった日本がたった20年そこらで「GNP世界第2位」になった。

 あの奇跡はなぜ起きたのか?

 実力だったのか?

 幸運だったのか?

 この問いに対する番組の答えは、「実力もあった。幸運もあった」でした。

 

 メインの問いが「なぜ?」であるのがいい。

 サザエさんを読み返したり、「ALWAYS 三丁目の夕日」を観たりすることで、高度経済成長で「何があったか?」を楽しく知ることはできます。

 ですが、「なぜ?」となると途端に小難しくなりがちで、さーっと飛ばしてしまい、よくわかっていない人も多いのではないでしょうか。

 私は社会科の教員であるくせに、「何があったか?」は大好きな一方、「なぜ?」はよくわかっていない人、いや、よくわかっていない犬でございました。

 

 では、幸運の方はさておき、日本にはどんな実力があったのでしょうか?

 第一に、日本には戦争中に兵器製造のために鍛え上げられた技術者がいました。

 これについては、ちょっと目からウロコ。

 そうか、言われてみりゃそうだな! と。

 敗戦によって日本はリセットされたのかと思っていましたが、それは表面的な政治の話であり、経済や技術はそうとは限らないのですね。

 むしろ、戦争中に植えた技術の種がのちに花開いたから、高度成長は成し遂げられたのだそうです。

 

 番組全体を通して、黒田精工の最高顧問・黒田彰一氏(放送時91歳。この方は戦時中に兵器製造を勉強していました)のコメントがもっとも印象的。

 一語一句同じではありませんが、高度成長の世界がちょっとよく見えるようになった気がします。

 

 「兵器は、一番精密なんですよ。だから面白い」

 「技術・工学は、両方に使える。兵器にも。医学にも。使うのは人間ですから」

 

 実力の第二に挙げられる、経済学者・下村治の理論についても少し理解が深められたかな。

 池田勇人元首相と同じで、私も数学的な理解には至っておりませんが。

 

 それから、スタジオにゲストでいらっしゃっていた五木寛之さんもよかった。

 アナウンサーが話し始めようとするのを狙ったかのようなかぶせの連続にはクスっとしましたが、高度成長の時代に生命を燃やして懸命に生きていたからこそのコメントはさすが。

 なぜ車がこれほどまで伸びたのか、という問いに対し、高度成長とはいえなかなか買い換えられなかった不便な家に対して、エアコンが効き音楽を流せる快適な車は、移動手段としてばかりではなく第二の家でもあったからみんな欲しがったのだという解説は、当時を生きていなければ出てこない。

 

 硬派な作りになっており、かつ「なぜ?」の説明に徹しているので、「何があったか?」ということや時代背景、最低限度の経済に関する知識がないと観るのはしんどい番組かもしれません。

 ただ、高度経済成長モノを観る上での下敷きとして、手に入れておいた方がよさそうな知識を得られますよ。