この時代を生き抜いた人が「最近の若いもんは」と嘆くのも頷ける/NHK「戦後ゼロ年 東京ブラックホール」

概要

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain2017年放送。59分。

 戦後ゼロ年、すなわち1945年8月15日から1946年までの間に何が起こったのかを取り上げたNスペ。

 山田孝之を当時の映像に融合させる技術を使い、ドラマ仕立てとなっている。

 2017年8月15日にリストラされ、ヤケ酒して酔った男(山田孝之)が気づいたら1945年8月15日にタイムスリップしていたところから番組は始まる。

 今の東京と70年前の東京には本当に連続性があるのかと疑いたくなってしまうような、カオスな無法地帯が広がっている。

 

評価

勉強度:4

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 1945年8月15日正午の玉音放送まで、つまり、どのようにして日本は壊れてしまったのかということについては、知る機会が結構たくさんあります。

 だけど、8月15日の午後から先、つまり、どのようにして日本は立ち直ったのかを学ぶ機会って意外とありません。

 この番組では、一度ゼロになった東京が、現在のモノであふれる東京にまで進化していく数直線の原点(ゼロ点)はどのようなものだったのかを追体験することができます。

 私は、知らないことばかりで驚きました。

 これってどこの国なの?

 治安が悪いどころじゃない。

 カオスの一言につきます。

 東京にこんな時代があったことを、知っていてもいいのではないでしょうか。

 

面白さ:5

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 文句なしです。

 まるで発展途上国の都市のような、カオスだけどエネルギーに満ち溢れた街を見ているような気分。

 撮るのが難しそうな画。

 山田孝之を当時の映像に自然と合成する技術。

 内容にしたって、知らないことばかりで。

 この番組のテーマとなっている「東京ブギウギ」が力強くも切なく響きます。

 

総評:4

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 面白いの一言に尽きる。

 この番組には、どれだけのカネと労力がかかっているんだ!

 それでいて、内容を落とすではなく、取材もしっかりとされている。

 

コメント

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain東京は「世界でもっとも秩序のある街」と呼ばれているそうですね。

 あるいは、東日本大震災のときには強盗や略奪が頻発するでもなく、海外から驚かれたなんて話も聞かれました。

 

 翻って、1945~46年の東京は「世界でもっとも秩序のない街」だったのかもしれません。

 この番組で紹介される当時の映像やらエピソードやらを見ると、「カオス」という言葉がボヤーッと浮かんできます。

 なんでもしないと生きていくことができない。

 それが法律違反・道徳違反だとしても。

 でなければ、餓死しておしまいだからです。

 

 この時代を生き抜いたおじいちゃん、おばあちゃんは、「最近の若いもんは軟弱だ」と嘆く権利を十分に持っていましょう。

 あの頃は大変だったというのも、どうやら本当です。

 「いやいや、今だって大変だよ!」と言い返したくなる気持ちもわかりますが、法律を破らなくてもよく、最後のセーフティネットが政府によって保障されていて、滅多なことでは餓死しない。

 それだけで今は十分幸せなのかも。

 

 落ちたら死ぬであろう、買い出し列車の外側にぶら下がる人たち。

 タバコの吸殻が入った残飯シチュー。

 ヤミ市の殺気。

 ガード下か土管の寝床。

 痩せてあばらが浮き出し腹が出た子ども。

 今や世界平和度指数では上位10番以内に入っている日本ですが、この頃は下から数えた方が早そう。

 

 それから、やはり敗戦国は惨めな扱いをされますね。

 若い米兵の間では、「日本人の若い女と遊びたければ、皇居前に行けばいい。チョコレートをあげればついてくる」ということが常識になっていたとか。

 日本人立入禁止の賭博場・キャバレー・ダンスホール・慰安施設で、米兵は贅沢三昧をしていたとか。

 水洗トイレのある家は占領軍に接収されて、占領軍将校やその家族の住居になったりとか。

 「共産主義の防波堤」として日本を強化する政策が決まる前の対日占領政策がどんなものだったのか、まざまざと見せつけられます。

 その裏で、何としても生きてやるんだというとてつもないエネルギーの塊もまた垣間見えました。

 

 と、ここまでは内容のお話。

 この番組でワンダフルなのはやはり演出でしたね。

 当時の映像にあまりにも自然に山田孝之が入り込んでいて、注意していないとどこにいるのか気づけないほど。

 映像合成技術もここまで来たのか……。

 これもう、どんな映像でも偽造し放題じゃないか!

 

 特に印象に残ったのは、次の2つのセリフ。

 ドラマの中で、キャバレーで働く女がいっていた「死んだつもりになれば、なんでもできるのよ」。

 それから、70年前に飛ばされた山田孝之のモノローグにあった「ここの人たちより、2017年のカラスの方が贅沢している」。

 さて、私たちは戦後ゼロ年から何を学ぶべきなのだろうか。