「百聞は一見にしかず」とはまさにこのこと!/NHK「THE LAST WAR ~完全版・カラーでみる太平洋戦争~」

概要

f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain2015年放送。89分。

 2015年は、太平洋戦争終戦より70年となった節目の年。

 NHKはこの年、太平洋戦争の中で撮られた映像を最新の技術によってカラー化しました。

 色々な分野の専門家に調査し、当時の色彩を再現したそうです。

 特定の一点ではなく、太平洋戦争の発端から(何なら明治・大正時代から)終戦、戦後復興までを通して取り上げています。

 地デジのような鮮明な映像ではなく、トイカメラのようなノイズの乗ったものですが、それでも「戦争を知らない子供たち」は言葉からしか学べなかった太平洋戦争をカラーで学ぶことができるという意味では、とても貴重な作品でしょう。

NHKスペシャル カラーでみる太平洋戦争 ~3年8か月・日本人の記録~ [DVD]

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評価

勉強度:5

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 文句なしの5。

 太平洋戦争をカラーで観ることができるとは……。

 すごい時代になったものです。

 90分でコンパクトに太平洋戦争の全体像を学べるというのもポイント。

 

面白さ:3

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 「太平洋戦争をカラーで見せる」ということそれ自体が目的となっているため、映像自体に問いや答えがない。

 当然、問いに視聴者を惹きつけるための、導入の工夫もあまりない。

 だからでしょうか、「太平洋戦争について勉強したい!」という情熱を持った人でなければ、途中でダレてしまう気がします。

 逆に、少しでも太平洋戦争について学びたいという意欲があれば、これ以上の入門作品はないでしょう。

 

総評:5

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 百聞は一見にしかず。

 このことわざを表したような映像になっています。

 もちろん、本から情景を想像する力は非常に大切でしょう。

 ですが、情景そのものを見ることができるのですから、そりゃぜひとも見ておくべきでは!

 色がついたことによって、「そこに確かに人間がいた」ということを痛感させられます。

 総評5は滅多に付けないつもりなのですが……この映像には大きな意義があると思い付けました。

 

 コメント

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain着色された当時の映像を見て強く感じたのは、「やはり70年前を生きた人間も人間なんだなぁ」ということです。

 

 歴史を学ぶ上では想像力が大切ですが、歴史の教科書に登場する人間と、今の時代の人間をイコールで結びつけることって結構難しいものです。

 その時代には確かに、今の人間と身体構造も脳みそもほぼ変わらない人間がいたということが、頭では分かるのですが……。

 どうしても、自分たちとは何かが違うのだろう、だからこんな悲痛な目にあっても耐えられるのだろうと思えてしまうのです。

 ですが、色の付いた映像の中にいる人々の赤い唇を見て、「あぁ、やはり同じ人間なんだなぁ」と痛感させられましたね。

 仮にそれが、人工的に付けられた色だとしても。

 

 特攻前の兵士の背に結び付けられた、色鮮やかなお守りの人形(妹にもらったものかな)。

 戦闘中ではない兵士たちの、屈託のない笑顔と白い歯。

 白黒では気づかない、熱そうな爆炎。

 ガ島にて捕虜になった日本人兵士たちの、浮き出たあばら骨。

 1945年8月9日、長崎にて、白目を向き血まみれで死んでいる女性と、その横で助けを待つ女の子。

 

 今の自分が同じ環境に立たされたとしたら何を感じるだろうかと考えさせられる、唯一無二の映像でした。 

 ただし、学校の先生方、少なくとも社会科の授業ではロケハンなしにこの映像を使わない方がいいかと思われます。

 冒頭にも注意書きが出るのですが、この映像には死体が映りすぎています。

 ぜひとも生徒にも見てもらいたいのですが……いい勉強になるからと、多感な生徒に安易にこれを見せるのは、教師のエゴになってしまうことでしょう。

 

 ところで、かつて奇跡的にもNHKのディレクターさんと雑談した機会があって、番組の作り方を教わったことがあります。

 やはり、構成にはこだわるんですね。

 問いの面白さや、使う情報の取捨選択などには、相当の力を入れるようです。

 

 そういう観点で言えば、この番組の「構成」は決して「面白い」ものではないのかもしれません。

 だって、太平洋戦争の開戦から終戦までを、時系列に沿ってなぞっているだけですから(失礼)。

 

 (※一応、カラー化にあたって当時の映像を改めて検証したら、これまでとは違った事実が浮き出てきたと紹介する箇所がいくつかありますが……。

 この番組は、カラー化によって戦争を再検証することではなく、あくまでカラー化された映像で太平洋戦争を伝えようというところが最大の目的だと感じました。

 戦後70年が経ち、戦争を語り継ぐことができる方々もお年を召していますからね。)

 

 ですが、この番組では他の構成は思いつきません。

 逃げることなく、ど真ん中に全力投球!

 

 あるいは、この構成になっていることによって、太平洋戦争全体について学習するための最高の入門作品になっているともいえそう。

 90分で、重要な資料には触れつつ、戦争の展開をコンパクトに理解できるからです。

 一見の価値あり。