School of Dog?

とりあえずは社会科に絞ろうと準備中。

モリー・グプティブ・マニング『戦地の図書館』(極限状態の中で、活字は人に生きる力を与えた)

戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)

戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)

 

f:id:school_of_dog:20151105224439j:plain総務省によれば、今や日本人の83%がインターネットを使っているんだとか。

 ネットを閲覧する媒体も、PCからスマホに移ってきました。

 「もう、一家団欒の時間までスマホばっかり見て!」と嘆くお母さま方も多いことでしょう

 ボクもちょっと必要があって生徒に見えるような形でYoutubeにつないだことがあったのだけど、その時トップページに某大物Youtuberの動画サムネイルが出てきたんだ。

 そしたら男子生徒のひとりが、「あ、それもう見た!」。

 え、まじかいと思ったら他の子たちも「オレもー!」「ワタシもー!」。

 Youtubeパワーすげぇなぁと思いましたね、うん。

 再生回数何百万回とかホントかよ、なんかの陰謀が加わっているんじゃねぇかって疑っていたけど、あながちウソじゃないなって。

 

 若者のスマホ中毒。

 このことが語られるときにセットで必ずついてくるのが、若者の活字離れです。

 それがいいか悪いかは置いておいても、確かに本が読まれる機会はどんどん減っていますよね。

 

 じゃあ、例えばですよ?

 本が消えたら、活字が消えたら、人間は生きていけるのでしょうか?

 現代っ子からは「そんなのヨユーだよ!」という声が聞こえてきそうですが、果たして。

 

 「もしも極限状況の中に置かれた時、活字は人に何を与えるか?」

 そんな巨大な思考実験の結果を示しているのが、『戦地の図書館』です。

 これは良い本ですよー。

 (まぁ、アメリカ視点で書かれた本なので第二次世界大戦におけるアメリカの行動を正当化する文章となっていますが……。

 それは日本の本もお互いさまなので、さしあたっては目をつぶりましょう)

 

 時は1940年代前半。

 世界は第二次世界大戦に突入していました。

 アメリカの若い男性たちはパール・ハーバー奇襲を受けて急きょ兵士になり、不安と緊張の日々を過ごすようになります。

 

 最悪の環境の中で兵士たちが求めたものは、「字」でした。

 なんでもいいから読みたい。

 兵士たちは、陸軍の機関紙を取り合うほどだったとか。

 そこに面白い情報なんて何も書かれていないでしょうに。

 

 印象的だったのが、Kレーション(携帯用戦闘糧食)のラベルを前線で兵士がむさぼり読んでいたということですね。

 気を紛らわせたかったんだろうな。

 退屈の中で文字を求める気持ちはわかります。

 つまらない授業で資料集を読みたくなるアレですな。

 違うか。

 

 そんな兵士の要望に応えて、銃後の国民から戦地に本を送る「図書館運動」も行われました。

 ですが、市民が寄贈した本は神学の専門書など、兵士にとって面白くないものばかりで。

 

 兵士が読みたい本を厳選して送ろう!

 しかも、戦場でも持ち運べる形にしよう!

 こうして作られたのが「兵隊文庫」でした。

 

 縦10cm×横14cmの新しい本は、兵士の精神を幾度となく救ったそう。

 ある時、ドイツ軍が大砲を撃ってきて、船上のアメリカ兵士はみな「こっちに飛んで来るな!」と極限まで精神を張り詰めていた。

 そんな時、隊員のひとりが緊張感もなく(と見えるが、実際は緊張の限界だったのだろう)『ブルックリン横丁』という本を読んでいたのである。

 大佐は半ばあきれながらも、彼に『ブルックリン横丁』を音読させた。

 そしたらその本が面白くて。

 隣で砲弾が炸裂し、いつ死ぬかわからない戦場で、兵士たちは腹を抱えて笑ったそうな。

 

 「戦争とは武力のぶつかり合いだが、それ以上に、意志のぶつかり合いだ。本は兵士の心を強くする」とは、陸軍の士気作戦部長・ムンソン大佐の言葉。

 ドイツが非ドイツ的な本を焚書したことを引き合いに出しつつ、アメリカの図書作戦が語られる本なのでありました。

 

 結論:極限状態の中で、活字は人に生きる力を与える。

 

 ところで、考えたくもありませんが、戦争が勃発し、日本の安保政策が変わって若者が戦場に行かなければならなくなったとしましょう。

 マロ大佐、君に兵士の精神維持を図る任務を命ずる。

 君は、彼らに「文庫本」と「無限にインターネットに繋げられるスマートフォン」のどちらを渡す?

 とエライ人に聞かれたらどうしよう?

 短期的なウケは後者の方が高いだろうけど、長期的に考えたら老婆心ながらも文庫本にしたいなぁ……。

 でも、第二次世界大戦のときとは時代も違うしなぁ……。

 悩むなぁ……。

 (そんなことにはならないから安心しろ)