
- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン,池央耿
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1980/05/23
- メディア: 文庫
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今さら私が紹介するまでもないほど有名な、SFの超名作『星を継ぐもの』。
このSFには、しばしばハードという冠詞が付きます。
ハードSF。
科学的に、論理的に書かれているSFのことだそうですが、だとしたらこの本はまさしくハードSFでしょう。
「宇宙服を着た人間の死体が、月で見つかった。この死体、なんと死後5万年が経過している! 装備品も、現在の人間よりずっと進んでいる。どうしてだろう……?」という謎に対して、科学的に挑戦していく過程が描かれます。
台風吹きすさぶ2017年10月29日、私は用事をこなすために、ちゃんと動くか怪しい電車に長時間乗ることになってしまいました。
その時、移動のお供に選んだのが『星を継ぐもの』。
めっちゃくちゃ読みたくて買ったのに忘れられ、本棚の奥で寂しくポツンと眠っていたこいつを叩き起こし、カバンに入れて出かけました。
なんなら、台風で電車が止まったとしてもゆっくり読書すればいいじゃないか。
そんな気持ちでいたわけです。
結局、電車が止まることはなかったものの、その日のうちに『星を継ぐもの』を読破してしまいました。
それどころか、よく分からなかったところがどうしても気になってしまい、雨でムワっとしたマクドナルドに入って確認し直す始末。
完全にストーリーを理解したときには、既に1時間が経過しており、帰りの電車を数本見送っていたことにそこでようやく気付きました。
それほどまでに週末の私は、『星を継ぐもの』にのめり込んでいたんですね。
さて、科学議論で中心的な役割をはたすのが、柔軟な思考の持ち主である原子物理学者のハントと、論理に固執する頭の固い学者かと思いきやある時点から無双する生物学者のダンチェッカーです。
彼らは思考方法こそ違いますが、実は彼らを貫く、そして物語を貫く哲学は共通しているように思えました。
それはきっと、挑戦することと、諦めないこと。
ネタバレにならない程度に、この物語の哲学的な核心を突いていると思うセリフを2ヶ所抜き出してみます。
「ダンチェッカーの魚が最初に泥沼から地上へ這い上がった時、すでに人類はいずれここまで来るように運命づけられていたんだ。連中を駆り立てている衝動は、きみをこれまで突き動かして来た何かとまったく同じ性質のものだ」(ハントと話す国連宇宙軍本部長・コールドウェルの言葉)
「人間が地球上の他の動物となぜこうも違うのか、諸君は一度でも考えてみたことがあるかね? 脳が大きいとか、手先が器用であるとか、その種の違いなら誰でも知っている。いや、わたしが言いたいのは、もっと別のことなのだよ。たいていの動物は、絶望的情況に追い込まれるとあっさり運命に身を任せて、惨めな滅亡の道を辿る。ところが、人間は決して後へ退くことを知らないのだね」(生物学者・ダンチェッカーの言葉。これまでのダンチェッカーの言動があったからこそ、このセリフにはカタルシスを感じる)
こういう哲学があるからこそ、この作品は単なる科学議論ものではなく、文学にもなるのです。
それから、タイトルも素晴らしいですね。
最後まで読んだ限り、「星を継ぐもの」というタイトルの指すものはみっつありそうです。
みっつの「星を継ぐもの」が分かった時には、この物語の謎も解けていることでしょう。
本当によくできています……。
すげぇ……。

- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン,池央耿
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続編『ガニメデの優しい巨人』にも、いつか挑戦したい。
そして、今やGooglemapで月やガニメデを探検できる時代になった。
チャーリーが眠っていた洞窟がどこにあるのか、探してみたけどわからなかった。