School of Dog?

ブログというより、昔のホームページみたいな……。

NHK_人間は何を食べてきたか「一粒の麦の華麗な変身 パン」

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain前回までのあらすじ。

 最近、NHKの『人間は何を食べてきたか』という番組にのめり込んでいるゴールデン先生(家庭科)。

 図書館でこのDVDを借りられることに気づき、彼女はご飯を食べながら見まくっている。

 ちなみに、ダックス先生f:id:school_of_dog:20151105224444j:plainはクビ(対話記事は書くのが大変だから)。

 

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f:id:school_of_dog:20151105224445j:plain「朝はパン♪ パンパパン♪」

 いやぁ、パンって本当に美味しいですよね。

 私はパンよりもおコメが好きですが、だからこそたまに食べるパンの美味しいこと美味しいこと。

  

 ずいぶん昔、無性にパンのことが気になった時がありました。

 パンってなんだろう。

 何でこんなに美味しいんだろう。

 気になりすぎてご飯5杯しか食べられないわ。

 このままだと空腹で、調理実習で生徒が作ったものをすべて食べつくしてしまい、学校に苦情が入ってクビになること必至。

 そこで私は、長年同棲をして結婚をなあなあにしてきてしまったカップルよろしく、ちゃんと向き合ってこなかったパンに正対する覚悟を決め、ある本を購入したのです。

 その本こそ、舟田詠子先生の『パンの文化史』でした。

 

パンの文化史 (講談社学術文庫)

パンの文化史 (講談社学術文庫)

 

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plainこれがまた、もんのすごく面白い本なんですよ。

 昔懐かしい三色パンのごとく、一冊で何度も美味しい。

 発酵について理系チックに説明したかと思ったら、パンの歴史学に飛び、お次はフィールドワーク、民俗学に宗教学と、引き出しがいくつあるのか心配になってしまうほどの幅広さ。

 6章構成ですが、1章ごとに独立して博士号を取れてしまうんじゃないかしら。

 最初はお風呂に入りながら軽い気持ちで読み始めたものの、「あ、これは適当に読むのは無理なやつだ」と気付き、ドトールでじっくり読んだ記憶があります。

 

 そんなステキな読書体験から数年経った本日、NHK「人間は何を食べてきたか」のパン特集を見ました。

 そしたら……、

 あ!

 『パンの文化史』を書いた舟田先生が出ている!

 

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f:id:school_of_dog:20151105224445j:plain舟田先生の本を読んだ記憶が蘇り、本棚の奥から『パンの文化史』をズズイと引っ張り出して、読み返してまたビックリ。

 『パンの文化史』が、『人間は何を食べてきたか』の公式ガイドブックになっていることに気がついたのです。(逆もまた然り。映像を見ることで、書籍の内容を視覚的に補足できる)

 よくよく聞けば、この取材の大部分を占める「マリア・ルカウ村」は、NHKに対して舟田先生が紹介した場所。

 だとすれば、舟田先生の本とこの番組がリンクしていないはずがありません。

 さぁ、番組と本のハッピーセットで、パンの世界にぐっと迫りましょう。

 

 NHKはムギの粉挽きを映像で紹介しています。

 水車を使う村あり、風車を使う村あり、手動で石臼を使う村あり……。

 ムギを粉にするだけでも、村の地理的な条件によってやり方が全然違うことを、視覚的に知ることができます。

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain水車を利用した粉挽き。複雑に装置が絡み合っていて、男子にとっては垂涎モノ。石臼は300kgもあるらしい。

 

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plainじゃあなぜ、ムギは粉にしなければならないのでしょうか。

 この説明、番組ではまったくなされません。

 あれぇ、何でかなぁと思って舟田先生にSOSを送ると、あっという間に返ってきました。

 

f:id:school_of_dog:20170803111108j:plainコメは粒のまま水で炊けば食べられるのに、ムギは粉にしなければならない。パンとはなんと手間のかかる食べ物なのだろう。粉に挽き、汗だくでこね、のし、丸め、焼き上げて、ようやく口にできるのだ。それはなぜか。

 コメというのは、皮がうすく、主要な栄養を含む内側がとても硬い。しかし、ムギはこの逆の性質をもつ。皮がかたく、内側がやわらかい。この皮を取るためには、どうしても粉にする過程を通らなければならないのである。

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plainなるほど、この説明があると、粉挽きの作業にこだわる理由もしっくりと来ますね。

 さて、先述の通り、番組の大半はオーストリアのマリア・ルカウ村探訪となります。

 

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plainこの村は、アルプスの深い谷間にあります。

 穫れるムギはライムギ。

 NHKは、この村で一番古いパン窯を持つテレジアさんを取材します。

 あ、テレジアさん!

 『パンの文化史』でも登場する方です。

 

 テレジアさんがパン窯でパンを焼く過程が映像で紹介されます。

 その作業を見ていると、気になることが。

 テレジアさんが、パン焼きの中で何度か生地に十字を印しているのです。

 その後、修道院でパンを焼く映像も出てきますが、ここでも十字印が登場。

 これは一体、どういう意味なのでしょうか。

 この問いにもばっちり、舟田先生は答えています。

 

f:id:school_of_dog:20170803111108j:plainパンの発酵は、パンを膨らませて美味しくする。けれども、発酵がうまくいかなければ、パンを腐敗させたりしてしまうかもしれない。また、そもそも焼くことに失敗し、生焼けになったり、焦げたりしてしまうかもしれない。

 こうした人為の及ばない現象への不安がパン焼きには付きまとう。一回のパン焼きで大量のパンを作るので、失敗するということは食べられないということを意味する。だから、成功を祈って神に祈るのだと思われる。

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plainなるほど。

 このアルプスの深い山中でパン作りに失敗してしまえば、それはすなわち死につながりかねませんものね。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain十字印その①。舟田先生によれば、パン焼きの過程で計5回十字を印すようだ。これは、生地をこね終わった時。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain十字印その②。完成したパンにナイフを入れる時。静止画では伝わりづらいが、十字を印している。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain場面変わって、修道院。ここでも、生地に十字が印されている。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain肉のときと同じで、やっぱり宗教が一枚噛んでいた。

 

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plainあまり舟田先生をヨイショしてばかりでもあれですので、最後に舟田先生抜きにこの番組について語りましょう。

 番組の中では、ベドウィンのパン焼きや、タタールというパン窯など、パンにまつわるさまざまな風景が映ります。

 その中でも私が特に好きなのは、最後のシーンです。

 収穫時に束から落ちたムギを、子どもが拾う。

 お母さんがそのご褒美にと、パンを焼いて子どもにあげる。

 この慣習には、「落ちたムギも大切にすれば、これだけのパンが得られるのだ。ムギは一粒でもムダにしちゃいけない」という教えが込められているそうです。

 

 私は小さい時、米粒ひとつぶに7人の神様がいるから、絶対に残してはいけないよと教わりました。

 食べている穀物こそ違いますが、人間には何か、食べ物にまつわる普遍的な教えがあるのでしょうね。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plainムギ拾いのご褒美に、子どもたちにパンを配るお母さん。"Bitte!"と言いながらパンを受け取る子どもたちは笑顔です。