School of Dog?

ブログというより、昔のホームページみたいな……。

遠野物語(岩手県遠野市)

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plain先ほど、「妖怪のせいなのね」と検索しようとしたら、候補に「妖怪のせいなのね 責任転嫁」と出てきました。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plainチャイルディッシュな「妖怪のせいなのね」に、アダルトな臭いがぷんぷんする「責任転嫁」という言葉がくっつくと、途端にアンバランスになりますね。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plainどうも、何でも妖怪のせいにする小学生が急増して、嘆いている大人たちがいるらしいですよ。

 あぁ、私もその言い訳が使える時代に生まれていたかった!

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain妖怪言い訳は子どもの特権であり、大人が同じことを言うとえらいことになります。

 職場でミスした時に「でも、実は私のせいではなく、妖怪のせいなのです」なんて言った日には、マッハ10で首が飛び、妖怪ヒキコウモリになってしまうことでしょう。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plainでも、この現象って裏を返せば、科学が浸透した現在でも、科学的に説明できない、目に見えない力をみんなどこかで信じているってことですよね。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain確かに、その通りですね。

 かつて、「近代」や「科学」がドカッと押し寄せ、それまで当たり前だった前近代的で非科学的な世界観とどう折り合いを付けたらいいのか、人々が悩んだ時代がありました。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plain明治維新のことですか?

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plainはい。

 近代化の波が押し寄せる中で、これまで人々が信じてきた「目に見えないもの」や「科学的に説明ができないもの」をまとめておこうとした偉人がいます。

 その人の名は、柳田國男(やなぎだ くにお)。

 今日は、柳田國男について書いてみようかと。

 

dic.pixiv.net

f:id:school_of_dog:20150803102459p:plainどうでもいいですが、「引きこもり 妖怪」と検索してみたら、妖怪ウォッチにそういうキャラがいたので笑いました。

 説明文は、次の通り。

 「ヒキ!」

 いつも部屋の中でパソコンをしてるヒキコウモリ、勢い余って強く押したエンターキー、へこんじゃったそうです!

 「一歩も外に出~たくな~いウチの中がユートピア~!」

  あれ、子ども向けって何でしたっけ。

 悪意ありすぎ(多分、褒め言葉)。

 

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f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain柳田國男(1875~1962)は、「日本民俗学の創始者」と言われています。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plain民俗学ってよく聞くけど、どういう学問ですか?

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain民俗学は、風俗や習慣、伝説、民話、歌謡、生活用具、家屋など古くから民間で伝承されてきた有形、無形の民俗資料をもとに、人間の営みの中で伝承されてきた現象の歴史的変遷を明らかにし、それを通じて現在の生活文化を相対的に説明しようとする学問である。(Wikipedia先生)

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plain生活やら思想の奥底にあるものを調べて保存しようとする学問……ということでしょうかね。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plainさて、柳田は、東京大学法学部を出て、農商務省(現在の農林水産省・経済産業省の前身)の官僚になりました。

 要は、エリートなわけです。

 小さい頃に飢饉を経験したため、農業の仕事に就いたとか。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plain民俗学の対象とする「何でもない庶民の生活」とは縁遠そうな地位ですね。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plainそんな柳田が、何で民俗学の世界に入ったのか。

 1908年、柳田は九州・四国で講演旅行をしました。

 そこで、色々な人の話を聞き、自分が学んできた机上の知識だけでは社会を何とかできるわけではないことに気付いたといいます。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plainなるほど。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plainそして、柳田は岩手県遠野出身の研究者(当時は作家を目指す早稲田大学の学生)である、佐々木喜善(ささき きぜん)と出会います。

 佐々木は、小さい頃から遠野に伝わる民話、つまり物語を聞いて育ちました。

 その民話を佐々木が語り、柳田が書き取ってまとめました。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plainあ!

 それが、有名な『遠野物語』ですね。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plainきっと、遠野が特に優れた民話を生み出していた地域……というわけではないのでしょう。

 日本全国、いたるところで、民話は語られていたはずです。

 遠野に関しては、優れた民話収集家の佐々木と、強い問題意識を持った柳田がいたため、こうして有名な作品として残っているわけです。

 『遠野物語』、今読んでみても、結構面白いと思いますよ。

 

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f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain『遠野物語』は、青空文庫で読むことができます。

 以下にリンクを貼るので、ちょっと開いてみて下さい。

 

柳田国男 遠野物語

 

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plainまず、冒頭の「この書を外国に在る人々に呈す」という言葉は、きっと比喩ですよね。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain文字通り外国にいる人を指しているのではないでしょう。

 明治維新後、かつて信じてきた「目に見えないもの」や「科学で説明できないもの」を忘れようとしている日本の人たちに、何かを問いかけているように見えます。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plainそれから、青空文庫に掲載されている原典で読めないことはありませんし、柳田國男さん自身の言葉には趣があるように思えますが、それでも通して読むのは大変でしょうね。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plainそうですね。

 もう少し、読みやすくなっている本もたくさん出ていますよ。

 例えば、私は遠野に行って見る前にこれを読みました。

 非常に読みやすいです。

口語訳 遠野物語 (河出文庫)

口語訳 遠野物語 (河出文庫)

 

 

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plainそれから、故・水木しげる氏も『遠野物語』をマンガ化しています。

水木しげるの遠野物語 (ビッグコミックススペシャル)

水木しげるの遠野物語 (ビッグコミックススペシャル)

 

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plain水木しげるさんと『遠野物語』は、相性が良さそうですね。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain水木しげる氏の、柳田國男に対する敬意が感じられる作品になっています。

 変な脚色がなされていない。

 それに、最後には水木しげる氏が夢の中で柳田國男に会い、会話するシーンもあります。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plain水木しげる氏といえば、妖怪ですからね。

 柳田國男さんのことを、さぞ尊敬していたことでしょう。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plainさて、私は遠野物語の魅力は「キャラクター」だと感じました。

 座敷わらし、河童、オシラサマ、大坊主……。

 魅力的なキャラがたくさん出てきます。

 その中でも人気のあるお話のひとつに、「鉄」という豪傑と、子どもを殺された母オオカミが戦うというものがあります。

 ある日、飯豊村(いいでむら)の村人が山に萱(かや)を刈りに行った帰り、穴の中にオオカミの子ども3匹を見つけます。

 この村人、オオカミが成長して村に被害を及ぼすと怖いので、2匹を殺し、1匹を持ち帰りました。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plainかわいそう……ですが、昔の人はそれだけオオカミを恐れていたということですよね。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain村人が子オオカミを殺した日から、村にはオオカミの被害が出るように。

 村の馬が、毎日毎日オオカミに殺されるようになってしまったのです。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plain復讐ですね。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain困った村人は、オオカミ狩りを決行。

 力自慢の男たちで、オオカミを探しに行きます。

 しばらく歩くと、突然メスのオオカミが一匹、男たちに襲い掛かってきました。

 このオオカミこそ、子を殺された母オオカミだったのです。

 立ち向かったのは、「鉄」という若者。

 鉄は、腕を噛まれながらも、母オオカミの腹の中まで腕を伸ばします。

 腕を噛み砕く母オオカミと、懸命に戦う鉄。

 鉄のピンチにも関わらず、周りの男たちは見守っているだけです。

 とうとう母オオカミは、その場で力尽き死にました。

 一方、鉄も担がれて村に帰りましたが、ほどなく死んでしまうというお話です。

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plainなるほど。

 どちらかが勝つのではなく、両方死ぬというところに、何かを感じますね。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plainちくまプリマー新書『遠野物語へようこそ』では、次のように説明されています。

 本来、もの凄い強い男である鉄がオオカミに勝つ、というのが説話の力学である。

 しかし、そこに母オオカミの愛情が加わってくると、展開は変わってくる。

 もの凄い強い鉄と対等に戦えば戦うほど、母の愛情が強調されるのである。

 周囲にいた人も、鉄を助けることはできたはずである。

 しかし、それをしない。

 豪傑と慈母との世紀の一戦を語り継がなければ、と思ったのではないだろうか。

 

遠野物語へようこそ (ちくまプリマー新書)

遠野物語へようこそ (ちくまプリマー新書)

 

 

f:id:school_of_dog:20151105224441j:plain面白い!

 でも、ストーリーが面白くないと、長い時を越えて語り継がれることはありませんよね。

 面白くて当たり前なのかも。

f:id:school_of_dog:20151105224443j:plain遠野物語は、119話まであります。

 ここですべてを紹介することはできませんので、興味がある方はぜひ読んでみて下さいね。

 

【参考】

f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain鉄と母オオカミが戦う話、原典の冒頭はこうなっています。

 六角牛山の麓にオバヤ、板小屋などいうところあり。広き萱山なり。村々より苅りに行く。ある年の秋飯豊村の者ども萱を苅るとて、岩穴の中より狼の子三匹を見出し、その二つを殺し一つを持ち帰りしに、その日より狼の飯豊衆の馬を襲おそうことやまず。

 

f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain水木しげる氏のマンガでは、こんな感じ。

 割と、原作に忠実なマンガ化がなされていることが分かりますよね。

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新釈 遠野物語 (新潮文庫)

新釈 遠野物語 (新潮文庫)

 

f:id:school_of_dog:20150803102459p:plainそれから、これは世界観だけを使い、ストーリーはオリジナルの、井上ひさし『新釈 遠野物語』です。

 ラッパが上手な犬伏老人に、主人公が物語を語ってもらう、という形でストーリーが進行します。

 短編集ですね。

 グロテスクな話あり、爽快な話あり。

 とにかく、バラエティに富んでいて、「そう来たか!」となる話がたくさんあります。

 遠野旅行のお供に買って読んだのですが、「面白い本だった」と印象に残っています。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain以下、実際に遠野を訪れた時の写真をば。

 5,000円くらいのデジカメしかなかったので、画質はごめんなさいです。

 そのくせして、画像が激重(げきおも)かもしれません。

 くそう、どうせ必要なんだから、もっと早くカメラに投資すればよかった……。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain遠野駅へは、盛岡駅から2~3時間で行くことができます。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain駅を出てすぐ、カッパがお出迎え。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain遠野観光の中心、伝承園。バスで行った記憶。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plainばあちゃん人形が民話を語ってくれるので、座って聞きます。でも、ほとんど何を言っているのか分からない。最後の「どんどはれ」は、岩手の方言で「めでたしめでたし」の意。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain遠野物語第14話「部落には必ず一戸の旧家ありて、『オクナイサマ』という神を祀る。その家をば大同(だいどう)という」。写真左がオクナイサマ。桑の木を削って顔を描き、四角い布の真ん中に穴を開け、顔から通して衣装にしています。また、写真右がオシラサマ。オシラサマは養蚕の神、オクナイサマは家の神だそうです。うおおお、オクナイサマが子どもに化けて田植えを手伝ってくれた話とか、馬と美しい娘がまぐわった話とか、色々書きたいけど恐ろしい長さになっちゃうから書けないぃぃぃ。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain伝承園の中には、御蚕神堂(おしらどう)と呼ばれる建物があり、オシラサマが1,000体展示されています。非常に不気味でもあります。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain絵馬の要領で、布に願い事を書き、首から通します。私も書きましたが、何を願ったのかは失念。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain柳田國男が、佐々木喜善から民話を聞き、書き留めています。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain『遠野物語』の原稿だぁぁぁぁ!

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain河童を探しに行く道中。遠野というと物語ばかり注目されますが、ビールの原料であるホップの一大産地でもあります。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plainキュウリも吊るしてあります。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain河童発見!……と思いきや、オブジェです。私の力では、本物の河童を見つけることはできませんでした。

 

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f:id:school_of_dog:20150803102459p:plain仕方がないので、雪の上に河童を錬成して帰ってきました。