School of Dog?

ブログというより、昔のホームページみたいな……。

食べること、生きること、死ぬこと、殺すこと/NHK『人間は何を食べてきたか 食のルーツ・5万キロの旅』

宮﨑駿監督が惚れ込んだ番組

 今、日本人の食卓は、人類史上、どの時代、どの民族にも増して豊かだと言われています。

 事実、毎日、世界の各地から、大型ジェット機が、肉、魚、野菜、果物を運んできます。

 しかし、どうでしょう。

 私にはこうした日本の食生活が、どうも根無し草のようになってきているんじゃないかなと、いささか気になります。

(NHK『人間は何を食べてきたか 食のルーツ・5万キロの旅』)

 

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plain「ジブリ飯」というものがありますね。

 古くは「カリオストロの城」の大盛りミートボールスパゲティ。

 それから、トーストに目玉焼きを乗せた「ラピュタ」パン。

 魔女の宅急便に出てきた「ニシンとかぼちゃのパイ」なんてのも印象的でした。

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plain最近では、「風立ちぬ」に出てきたシベリアがヒットしていたわよね。

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plainジブリに特段詳しくない私でも、宮﨑駿監督は食事シーンに対して並々ならぬこだわりがあるんじゃないかと考えることができます。

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plain宮崎監督の食に対するこだわりは、彼がとある番組の権利を買ったことからも分かるかもしれないわよ?

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plainえ、どういうことですか?

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plainNHKで1985年から1994年の間に放送された「人間は何を食べてきたか」というドキュメンタリーのDVDが、なんとジブリから発売されているのよ。

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plainNHKの番組を、ジブリが販売?

 そんなことがあるのか……。

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plainその辺の経緯については、これまた有名なモンスターサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」さんに詳しく書かれている。

 糸井さん、2003年2月21日の記事。

 

そこに、あるドキュメンタリー番組の噂が飛び込みました。

『人間は何を食べてきたか』という

NHKが放映した番組のことでした。

これを、あの宮崎駿監督がたまたま観て、

「こんなすごいドキュメンタリーがあるのか」と、

魂をつかまれてしまったらしいのです。

番組としては、せいぜい再放送される程度で、

おおぜいの人に観てもらう機会はなくなってしまいます。

宮崎さんは、ぼくなんかにも、

その番組のことを熱く語っていました。

おそらく、会う人会う人に、あんなふうに語っていたのだと想像します。

やがて、この番組の権利をジブリで買い取って、

ライブラリーとして、おおぜいに観てもらう機会を

つくろうと本気で考えたようです。

その意気込みが、じわじわと伝わっていって、

ほんとうに「全8巻」のジブリ学術ライブラリーとして

発売されるまでに至ったのであります。

 

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plainなるほどなるほど。

 宮崎監督をこれほどまでに興奮させた「人間は何を食べてきたか」という番組、ちょっと気になってきました!

 

食べること、生きること、死ぬこと、殺すこと

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plainさて見てみよう!

 ……と思ったのですが、残念なことにNHKオンデマンドには第0話しかありませんでした。

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plainまぁ、さっき「権利をジブリが買い取った」って言ったばかりだからね。

 むしろ、第0話だけでも見せてくれるのは良心的なのかもしれないわ。

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plain第0話は、全体の導入的な位置づけ。

 番組は、タイのアカ族が稲作を行うシーンから始まる。

 その後、パキスタン・ラホールの市場をバックに、冒頭紹介したナレーションが入るんです。

 我々の食は「豊か」と言われるけど、その実根無し草なんじゃないか、と。

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plain当たり前のように行っている食事だけど、飽食の時代、私たちの食は浮ついているのかもしれない。

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plain人は食べないと生きていけない。

 そして、他の生を殺さないと、自らの生は手に入らない。

 そんな当たり前のことも忘れて、機械的に、無感動に、苦労なく「豊か」な食を摂取して。

 それであんたら、本当に生きていると言えるのかよ!?

 平たく言えば、そういうことを問いたい番組なんじゃないでしょうか。

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plain言葉は乱暴だけど、そういうことだと思うわ。

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plain昔、青春18きっぷで兵庫だか岡山だかを旅行をしていたら、電車に乗っていたおじちゃんが話しかけてきた。

 そのおじちゃんが、こんなことを言っていたんです。

 なぁ、最近の若いのは、死を知らなさすぎるよな。

 家族や親戚、友達はなかなか死なない。

 メシだって、無菌空間みたいなもんじゃないか。

 マクドナルドのハンバーガーに挟まっているのが「牛」だってことすら忘れている。

 って。

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plain確かに、その通りかもしれないわ。

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plain翻ってこの番組を見てみると、「生」と「死」が溢れかえっている。

 登場人物は、「食」と「生」と「死」の密接な関係を忘れていない。

 ボクたちなんかよりも、語弊があるかもしれないけどよほど「死」に近い人も出てくる。

 それなのに、なぜだか彼らの目は輝いている。

 うーん、ボクたちは本当に豊かなのかな?

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plainいやね、最近、戦争の話をしない若者たちを嘆くような曲を聞いたのよ。

 でも、ひねくれないで考えれば、どう考えたって平和で、そういう話をしなくてすむ方がいいじゃない。

 死ぬ危険性の低い今は、間違いなく幸せな時代なの。

 そこだけは取り違えちゃいけないと思う。

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plainそれには、まったくもって同意。

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plain一方で、その代償として失ってしまったものも、真摯に問わないといけないね。

 この番組を見てそんなことを感じたわ。

 

人間は何を食べてきたか 食のルーツ・5万キロの旅

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plain番組を見ながら書いたメモには、タイ・アカ族の稲作、ベドウィンのチーズ、ダマスカスのパン、ドイツの肉食文化、アンデスのじゃがいも、とある。

 ビジュアル的に強いシーンがたくさん登場したなぁ。

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plain百聞は一見にしかずとはよく言ったもので。

 確かに、何でもかんでも映像に頼らないための想像力は大切。

 だけど、こればっかりは映像を見ておいた方がいいというものもたくさんある。

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plainBGMも多くなく、いたって真面目な雰囲気の番組だ。

 ボクなんかは、エンタメとして動画を見るときと、勉強として動画を見るときとを分けているからさして気にならない。

 けど、ダラっとテレビを見たい人がザッピングして、パッとこの番組が映ったら、果たして見るのかな?

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plain見ないんじゃないかなぁ……。

 でも、視聴者に媚びてしまったらこういう番組ができなくなっちゃうわ。

f:id:school_of_dog:20151105224444j:plainいやぁ、DVDボックス欲しいなぁ。

 本当に欲しい。

 3万円の価値は、間違いなくあると思いました。

 

人間は何を食べてきたか 8巻セット [DVD]

▲これです! かなり本気で欲しい。

 

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▲1985年の番組。地図がハイテクハイテクしていなくて、懐かしい雰囲気。

 

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▲ベドウィン(砂漠の民)によるチーズ作り。お母さんがこのチーズをこねているのだが……。

 

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▲その後ろで、お母さんの洋服を子どもが真似してこねているのだ! 本筋とは関係ないが、こういうところに本当の意味での人間を見た。映像の素晴らしさを見た。NHKスタッフの本気を見た。

 

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▲これが、ベドウィンが作ったチーズ。過酷な砂漠の中で、なんと10年も保存できるという! そうそう、この番組は「保存」がたびたび登場するんです。

 

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▲保存といえば、ドイツの豚肉。肉食は贅沢……ではなく、番組に言わせれば、穀物を収穫できない冬に「ギリギリ命を繋ぐ糧」だったのだ。このあと、この豚は解体される。日本人が魚を解体するかのように。内臓あり、大量の血ありのショッキングな映像? しかし、これこそ食べることであり、生きることであり、死ぬことであり、殺すことであり。豚汁を食べながらこの番組を見たので、ちょっと複雑な気持ちになった。

 

【追記】

f:id:school_of_dog:20151105224445j:plain近所の図書館に行ったら、なんとDVDが全部置いてありました!

 やったー!

 ゆっくり見つつ、勉強していきたいなと思います。